第7回 なぜ銀行は「後継者出資の新設会社方式」の持株会社スキームばかり提案するのか?


事業承継の相談を銀行にすると

「持株会社を作りませんか?」
「後継者が新会社を設立し、そこへ融資を行う方法があります」

この提案を受けた社長は多いと思います。

実際、銀行が提案する事業承継スキームのかなりの割合が、この方法です。

では、なぜ銀行はこのスキームを積極的に提案するのでしょうか?



銀行がよく提案する持株会社スキーム

流れはシンプルです。

① 後継者が新会社(持株会社)を設立
② 銀行がその会社へ融資
③ 新会社がオーナーから株式を買い取る
④ 本体会社から持株会社への配当を原資に借入返済

一見すると、

・後継者へ承継できる
・オーナーは現金化できる
・持株会社体制もできる

非常にきれいなスキームに見えます。



なぜ銀行はこの方法を勧めるのか?

理由は非常に明快です。

銀行にメリットが大きいからです。

具体的には、
・持株会社へ大型融資ができる
・金利収益が発生する
・オーナーへ多額の現金が渡る
・資産運用提案につながる
・不動産投資提案につながる

つまり、

銀行として収益化しやすいスキーム

なのです。

もちろん、すべてが悪いわけではありません。
しかし問題は、

「本当に会社に最適なのか?」

という視点が抜け落ちやすいことです。



社長が見落としやすい最大のリスク

このスキームでは、持株会社の返済原資は本体会社からの配当です。

つまり、

本体会社が高利益を出し続けることが前提

になります。

例えば、年間3,000万円返済する場合。

法人税等の実効税率を35%とすると、

約4,600万円規模の税引前利益が必要になります。

景気悪化、人件費高騰、原材料高…。
利益が落ちれば、一気に返済負担が重くなります。

ここまで丁寧に説明されずに進むケースは少なくありません。



銀行があまり提案しない「株式移転」

実は、持株会社を作る方法は他にもあります。

その代表例が「株式移転」です。

これは、新設持株会社へ既存株式を移し、
対価として持株会社株式を受け取る方法です。

特徴は、

借入を伴わずに持株会社化できる可能性がある

ことです。

では、なぜ銀行は積極提案しないのでしょうか?

答えはシンプルです。

融資が発生しにくいからです。

融資がなければ、金利収益も金融商品提案も難しくなります。



今週の結論

銀行提案のスキームが悪いわけではありません。

しかし、

「銀行が勧める=自社に最適」ではない

という視点は極めて重要です。

事業承継で本当に考えるべきなのは、

・誰のためのスキームか
・将来のキャッシュフローに無理はないか
・成長戦略につながるか

です。

事業承継は、融資の話ではありません。
会社の未来をどう設計するかという、経営そのものなのです。



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