実録事例シリーズ 第17回

「株価9億円を1億円へ」

事業承継対策から始まり、年商120億円・業界No.1へ成長した会社

今回は、私が関わった事業承継の中でも、

「事業承継対策が、その後の会社の成長戦略につながった」

という事例をご紹介します。

福岡県に本社を置くガラス製品製造業A社。

当時、年商20億円、従業員100名。

会長は70歳。
後継者である長男が35歳で社長に就任していました。

後継者は決まっている。

業績も悪くない。

一見すると、事業承継に大きな問題はないように見える会社でした。

しかし、株式を見ると状況は違いました。



35歳の社長が持っていた株式は、わずか5%

当時の株主構成は、

・会長 70%

・社長 5%

・次男 5%

・会長夫人 20%

つまり、経営は長男である社長へ移り始めていましたが、

株式の90%は会長夫妻が持ったまま

だったのです。

さらにA社には5社の関連会社がありました。

そこで私は、まず5社それぞれの株価を計算し、それを踏まえてA社の株式評価を行いました。

その結果、A社の株価総額は約9億円。

このまま株式を放置すれば、将来の承継に大きな負担となります。



株価9億円をどうするか

そこで、株価対策と承継対策を同時に進めました。

福利厚生の充実も目的として、全従業員を対象とした法人保険に加入。

さらに、

・含み損を抱えていた遊休土地の売却

・会長への役員退職金の支給

などを実施しました。

その結果、

約9億円だった株価を約1億円まで引き下げることができました。

そして、社長が出資する持株会社を設立。

その持株会社が会長夫妻の株式を買い取ることで、

経営の承継と株式の承継を進めました。

これでA社の事業承継は、大きく前進しました。

しかし、この案件には続きがあります。



3年後、突然の出来事が起きる

大阪には、A社の商品を扱う専門商社B社がありました。

年商60億円。

経営していたのはA会長の弟であるB社長でした。

B社の株主構成は、

・A会長 40%

・B社長 20%

・A社 20%

・B社長夫人 20%

さらにB社にも5社の関連会社がありました。

形式上は別会社。

A会長もA社長も、

「弟が経営する別の会社」

という認識だったと思います。

ところが、A社との資本関係や取引実態を見ていくと、私は違う見方をしました。

「実態として、B社はA社グループとして考えるべきではないか」

ということです。

その矢先、B社長が急逝されました。



「B社もグループに入れましょう」

私はA会長とA社長に、

「B社はA社の商品を販売する重要な会社です。持株会社でB社株式を取得し、
グループとして一体経営してはどうでしょうか」

と提案しました。

A社は「つくる会社」。

B社は「売る会社」。

別々に考えるのではなく、一つのグループとして再編する。

それが、事業承継だけではなく、次の成長につながると考えたからです。



そして現在

当時、A社は年商20億円。

B社は年商60億円でした。

それぞれに関連会社を抱えていた企業群を、事業承継を契機としてグループ全体で捉え直しました。

そして現在、

年商120億円。

業界No.1の企業グループへ成長しています。



この案件が教えてくれたこと

もし最初の目的を、

「会長の株を息子に承継する」

だけにしていたら、ここまでの展開にはならなかったかもしれません。

事業承継には、

・株価をどうするか

・誰に株式を渡すか

・誰を社長にするか

という問題があります。

しかし、それだけではありません。

事業承継は、グループ全体を見直す絶好の機会でもあるのです。

資本関係を整理する。

事業を整理する。

経営者を交代する。

そして、次の成長戦略を描く。

そこまで考えて初めて、事業承継が会社の飛躍につながります。



今週の提言

事業承継は、

「株を渡して終わり」ではありません。

むしろ、

「次の成長を始めるチャンス」です。

この会社も、最初は9億円の自社株をどう承継するかという問題から始まりました。

しかし、その対策をきっかけに資本関係を整理し、さらにグループ再編へ進みました。

結果として、現在は年商120億円、業界No.1へ。

事業承継を「守りの対策」で終わらせるのか。

それとも「成長戦略のスタート」にするのか。

社長の考え方一つで、10年後の会社の姿は大きく変わる。

私は、この会社からそれを教えてもらいました。



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