最近、立て続けに3件、会社を「売りたい」というM&Aの相談を受けました。
驚いたのは、3社とも非常に優良な企業だということです。
1社は、規模も業績も申し分なく、上場していてもおかしくないような会社。
もう1社には、後継者がいます。
そして、もう1社は各取引銀行との関係も非常に深く、銀行の役員クラスが日頃から訪問してくるような会社です。
普通に考えれば、私でなくても相談する相手はいくらでもいます。
銀行もある。
顧問税理士もいる。
大手M&A会社もある。
証券会社やコンサルティング会社という選択肢もあるでしょう。
それなのに、なぜ私に相談してくださるのだろう。
最近、そんなことを考えています。
M&Aは「会社を売る話」だけではない
私は、社長から「会社を売りたい」と相談されても、すぐにM&Aの話を進めることはありません。
まず聞くのは、
「なぜ、売ろうと思われたのですか?」
ということです。
後継者がいないからなのか。
後継者はいるけれど、このまま任せることに不安があるのか。
会社をもっと成長させるために、大きな企業やファンドの力を借りたいのか。
あるいは、自分自身の年齢や健康を考えてのことなのか。
同じ「会社を売りたい」という言葉でも、その背景はまったく違います。
特にオーナー企業の場合、会社を売るという決断は、単なる株式の売買ではありません。
何十年もかけて育ててきた会社。
社員。
取引先。
家族。
そして、自分自身の人生。
そのすべてが絡んできます。
だから私は、M&Aの相談を受けたときほど、急がないようにしています。
社長が本当に求めているものは何か
銀行員時代を含め、30年以上、多くの中小企業経営者とお付き合いしてきました。
その中で感じるのは、社長という立場は意外と孤独だということです。
会社の将来について、本当の本音を誰に話せばいいのか。
銀行には銀行の立場があります。
顧問税理士には税務の専門家としての役割があります。
M&A会社に相談すれば、当然M&Aを中心に話が進んでいきます。
どれも大切な専門家です。
しかし社長が欲しいのは、最初から答えを決める人ではなく、
「自分にとって、会社にとって、本当に何が一番いいのか」
を一緒に考えてくれる相手なのではないでしょうか。
M&Aをしないという結論もある。
親族に承継する方法もある。
社員に託す方法もある。
外部資本を入れて成長を目指す方法もある。
そして、100%譲渡して、新しい株主に会社の未来を託す方法もある。
私は、最初からM&Aありきで考える必要はないと思っています。
最後は「誰に相談するか」
今回の3社を見て、改めて感じました。
優良企業だから悩みがないわけではありません。
後継者がいるから事業承継が解決しているわけでもありません。
銀行との関係が深いから、会社の将来について何でも相談できるわけでもありません。
むしろ、会社が大きくなればなるほど、社長が抱える問題は複雑になります。
そして最後は、
「誰になら、本当のことを話せるか」
なのだと思います。
今回、3人の社長が私に相談してくださった本当の理由は、私には分かりません。
ただ、もし長年のお付き合いの中で、
「橋本になら、一度話してみよう。」
そう思っていただけたのであれば、これほどありがたいことはありません。
M&Aは、会社を売るためだけの仕事ではない。
社長が会社の未来を決断するための仕事です。
だからこそ私は、売ることを急がず、まず社長の話を聞く。
そして、考えられる選択肢を一緒に並べる。
そのうえでM&Aが最善だと判断すれば、全力でお手伝いする。
これからも、そんな「社長の相談相手」であり続けたいと思っています。
第17回 なぜ、私にM&Aの相談をしてくれるのか?
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