第17回 今週の提言(2026年8月4日号)

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「知らないリスク」は、会社の“隠れ損失”になっていないか

―― 約200社を振り返って、いま私が感じていること

私は今、これまで面識のある経営者の中から、事業承継について提案や相談をしてきた約200社を振り返り、

「知らないリスク」と「放置リスク」

という視点から、研究・分析を進めています。

なぜ、そんなことをしているのか。

理由は一つです。

事業承継が極めて重要な経営戦略であることを、一人でも多くの社長に理解していただき、
少しでも早く行動してほしいからです。

私はこれまで、銀行員時代を含め30年以上、中小企業の経営者と向き合ってきました。

その経験の中で、最近改めて感じていることがあります。

それは、

「知らないリスク」が大きい会社ほど、将来、大きなコストを負担する可能性が高いのではないか

ということです。

もちろん、現在分析を進めている段階ですから、一概には言えません。

しかし、約200社を振り返っていると、ある傾向が見えてきます。

自社株の評価額を知らない。

株主構成を正確に把握していない。

相続が起きた場合、株式がどうなるのか分からない。

後継者は決めていても、経営権をどう移すか決めていない。

M&Aや組織再編、持株会社など、自社にどんな選択肢があるのか知らない。

こうした「知らない」が積み重なっている会社ほど、事業承継への着手も遅くなりがちです。

そして、着手が遅れるほど問題は複雑になります。

株価が上昇する。

株式が相続によって分散する。

後継者を育てる時間がなくなる。

組織改革が進まない。

本来なら使えたはずの選択肢が使えなくなる。

結果として、将来支払うコストが大きくなってしまうのです。

私はこれを、

会社の「隠れ損失」

と考えています。

決算書には出てきません。

毎月お金が出ていくわけでもありません。

だから、社長自身もなかなか気づきません。

しかし、

「もっと早く自社株を調べていれば」

「もっと早く株主構成を整理していれば」

「もっと早く後継者に権限を移していれば」

「もっと早く会社の将来を考えていれば」

そうした「もっと早く」が積み重なった結果、5年後、10年後に大きな差となって表れます。

さらに、私が注目していることがあります。

あくまで私がこれまで見てきた会社から感じていることですが、

「知らないリスク」が大きい会社は、事業承継だけでなく、
会社そのものの成長も鈍くなる傾向があるのではないか

ということです。

なぜなら、事業承継を考えることは、単に後継者を決めることではないからです。

自社の価値を知る。

株主構成を見直す。

組織を見直す。

経営者を育てる。

新しい事業を考える。

M&Aや外部資本も含めて、会社の未来を考える。

つまり、事業承継に向き合うことは、

会社の経営そのものを見直すこと

なのです。

反対に、「まだ先の話だから」と放置している間にも、会社を取り巻く環境は変わり続けています。

人手不足、原材料高、金利、人口減少、市場縮小。

現状維持をしているつもりでも、実際には会社の競争力が少しずつ失われている可能性があります。

だから私は、「知らないこと」を単なる知識不足だとは考えていません。

知らないことによって、会社が本来得られたはずの成長機会を失っているとすれば、それも立派な経営上の損失です。

そして、その損失は決算書には表れません。

だからこそ怖いのです。

まずは、自社の現在地を知ること。

そして、問題が見つかったら放置しないこと。

事業承継は、社長が引退するときに始めるものではありません。

会社が元気なうちに、次の10年を考えるために始めるものです。

「知らないリスク」を減らすことは、リスク対策だけではありません。

会社の可能性を広げることでもあります。

知らないまま、放置するのか。

知ったうえで、未来に向けて動き始めるのか。

その小さな違いが、5年後、10年後の会社に、大きな差を生むのではないでしょうか。



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