「知らないリスク」は、会社の“隠れ損失”になっていないか
―― 約200社を振り返って、いま私が感じていること
私は今、これまで面識のある経営者の中から、事業承継について提案や相談をしてきた約200社を振り返り、
「知らないリスク」と「放置リスク」
という視点から、研究・分析を進めています。
なぜ、そんなことをしているのか。
理由は一つです。
事業承継が極めて重要な経営戦略であることを、一人でも多くの社長に理解していただき、
少しでも早く行動してほしいからです。
私はこれまで、銀行員時代を含め30年以上、中小企業の経営者と向き合ってきました。
その経験の中で、最近改めて感じていることがあります。
それは、
「知らないリスク」が大きい会社ほど、将来、大きなコストを負担する可能性が高いのではないか
ということです。
もちろん、現在分析を進めている段階ですから、一概には言えません。
しかし、約200社を振り返っていると、ある傾向が見えてきます。
自社株の評価額を知らない。
株主構成を正確に把握していない。
相続が起きた場合、株式がどうなるのか分からない。
後継者は決めていても、経営権をどう移すか決めていない。
M&Aや組織再編、持株会社など、自社にどんな選択肢があるのか知らない。
こうした「知らない」が積み重なっている会社ほど、事業承継への着手も遅くなりがちです。
そして、着手が遅れるほど問題は複雑になります。
株価が上昇する。
株式が相続によって分散する。
後継者を育てる時間がなくなる。
組織改革が進まない。
本来なら使えたはずの選択肢が使えなくなる。
結果として、将来支払うコストが大きくなってしまうのです。
私はこれを、
会社の「隠れ損失」
と考えています。
決算書には出てきません。
毎月お金が出ていくわけでもありません。
だから、社長自身もなかなか気づきません。
しかし、
「もっと早く自社株を調べていれば」
「もっと早く株主構成を整理していれば」
「もっと早く後継者に権限を移していれば」
「もっと早く会社の将来を考えていれば」
そうした「もっと早く」が積み重なった結果、5年後、10年後に大きな差となって表れます。
さらに、私が注目していることがあります。
あくまで私がこれまで見てきた会社から感じていることですが、
「知らないリスク」が大きい会社は、事業承継だけでなく、
会社そのものの成長も鈍くなる傾向があるのではないか
ということです。
なぜなら、事業承継を考えることは、単に後継者を決めることではないからです。
自社の価値を知る。
株主構成を見直す。
組織を見直す。
経営者を育てる。
新しい事業を考える。
M&Aや外部資本も含めて、会社の未来を考える。
つまり、事業承継に向き合うことは、
会社の経営そのものを見直すこと
なのです。
反対に、「まだ先の話だから」と放置している間にも、会社を取り巻く環境は変わり続けています。
人手不足、原材料高、金利、人口減少、市場縮小。
現状維持をしているつもりでも、実際には会社の競争力が少しずつ失われている可能性があります。
だから私は、「知らないこと」を単なる知識不足だとは考えていません。
知らないことによって、会社が本来得られたはずの成長機会を失っているとすれば、それも立派な経営上の損失です。
そして、その損失は決算書には表れません。
だからこそ怖いのです。
まずは、自社の現在地を知ること。
そして、問題が見つかったら放置しないこと。
事業承継は、社長が引退するときに始めるものではありません。
会社が元気なうちに、次の10年を考えるために始めるものです。
「知らないリスク」を減らすことは、リスク対策だけではありません。
会社の可能性を広げることでもあります。
知らないまま、放置するのか。
知ったうえで、未来に向けて動き始めるのか。
その小さな違いが、5年後、10年後の会社に、大きな差を生むのではないでしょうか。
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