実録事例シリーズ 第13回

「社長が亡くなった後、会社は誰のものになるのか」

年商10億円。
利益5,000万円。
純資産5億円。

堅実な経営を続ける製造業でした。

当時の株主構成は、

・社長 55%

・社長夫人 15%

・専務 30%

社長は75歳。

お子様はおらず、後継者も決まっていませんでした。



事業承継を提案したくても、話が進まない

私は何度も会社を訪問し、事業承継についてお話しする機会を探していました。

しかし、実質的な窓口となっていた専務からは、

「その話は結構です。」

という雰囲気で、なかなか社長へ直接提案できませんでした。

社長ご本人も高齢であることから、私は「何とかお話ししなければ」という思いを持ち続けていました。



私が心配していたこと

社長が亡くなれば、株式は奥様が相続される。

その後、奥様が会社をどうするか判断されるだろう。

場合によっては、M&Aという選択肢もあるのではないか。

私はそのように考えていました。

しかし、実際は違いました。



社長の死後、会社は大きく動いた

社長が亡くなると、会社経営に関わったことのない奥様は、何を判断すればよいのか分かりませんでした。

結果として、実務を担っていた専務の提案どおりに手続きが進められました。

社長が保有していた株式は会社が自己株式として取得。

さらに、奥様が保有していた株式も会社が買い取りました。

その結果、

専務が100%の株主となり、会社の経営権を取得したのです。



見落とされていた税務上の問題

社長の死亡に伴う自己株式取得は、相続発生後の手続きであったため、
税務上の特例が適用され、比較的有利な課税となりました。

しかし、奥様が保有していた株式まで自己株式として買い取ったことについては、
税務上の取扱いが異なり、結果として大きな税負担が発生しました。

もし事前に全体を見据えた承継設計を行っていれば、違う選択肢も十分考えられた案件でした。



この案件が教えてくれたこと

事業承継では、

「誰が株を持っているか」

だけではなく、

「誰が最終的に経営権を持つのか」

まで考えなければなりません。

相続が発生してからでは、選択肢は大きく減ってしまいます。



今週の提言

事業承継は、

「株式を相続すること」がゴールではありません。

本当に重要なのは、

「会社を誰に託すのか」

を、生前に決めておくことです。

株主構成を理解しないまま相続が発生すると、思いもよらない形で経営権が移ることがあります。

事業承継は、相続対策だけではありません。

経営権をどう設計するかという「経営そのもの」の課題です。

だからこそ、元気なうちに準備することが、会社と家族を守る最善の方法なのです。



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