実録事例シリーズ 第15回

「私が受注できなくても、社長の会社が良くなればそれでいい」

本当に大切なのは、誰が実行するかではなく、会社の未来です。

年商160億円。
営業利益10億円。
自己資本110億円。
従業員500名。

地域を代表する超優良企業でした。

社長は49歳の三代目経営者。

会社の業績は申し分ありませんでしたが、事業承継には大きな課題を抱えていました。



問題は業績ではなく、株主構成でした

株主構成は、

・社長 64%

・関連会社A社 14%

・関連会社B社 7%

・持株会 6%

・義母 9%

特に大きな問題は、9%を保有する義母の存在でした。

義母は先代社長の後妻で、現社長とは血縁関係がありません。

さらに、先代との間には子どもがおり、現社長とは異母兄弟という複雑な家族関係でした。

株主総会では、その義母との意見対立が繰り返されていたのです。



企業価値は約90億円

概算の自社株評価額は約90億円。

さらにグループ会社4社との株式持ち合いもあり、資本関係は非常に複雑でした。

一方で、ゴルフ場を2か所経営しており、そのうち1か所は赤字。

もし売却する場合には、約20億円もの含み損が発生する状況でした。

単なる相続対策では解決できない案件でした。



私が提案したこと

私は社長に対し、

・組織再編を活用した持株会社制への移行

・義母が保有する9%株式へのスクイーズアウト対策

・中小企業投資育成株式会社の活用による株価対策

を一体で提案しました。

ポイントは、

事業承継・資本政策・将来の成長戦略を一つの設計図として考えることでした。



実行したのは、別の専門家でした

その後、社長は私が紹介した専門家ではなく、顧問税理士から紹介された組織再編に詳しい税理士へ依頼されました。

そして実施された内容は、私が提案した方向性とほぼ同じものでした。

「受注できなかった」と考える人もいるかもしれません。

しかし、私はそうは思いませんでした。

社長の会社にとって最善の方法が実現したのであれば、それが一番良い結果だからです。

実際、その税理士とは後にご縁ができ、今では私自身も大変お世話になっています。

そして社長は、

「橋本さんが最初に道筋を示してくれたおかげです。」

と感謝の言葉をくださいました。



この案件が教えてくれたこと

事業承継は、

「誰が仕事を受注するか」

ではありません。

本当に大切なのは、

社長が納得し、会社にとって最善の選択が実現することです。

私は、そのための道筋を示すことが、事業承継コンサルタントの役割だと考えています。



今週の提言

事業承継で最も大切なのは、

「自分の提案を通すこと」ではありません。

「会社にとって最善の答えを導くこと」です。

経営者には、税理士、弁護士、司法書士、金融機関など、多くの専門家が関わります。

だからこそ必要なのは、

それぞれの専門性をつなぎ、会社全体を見渡して最適な方向へ導く人です。

私は、その役割を担いたいと考えています。

事業承継は、一人の専門家だけで完結するものではありません。

社長が安心して未来を託せる体制をつくることこそ、本当の事業承継だと私は信じています。



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