「後継者は決まっていた」
それでも事業承継は終わらなかった
年商10億円。
利益1億円。
純資産10億円。
地域では知られた優良企業でした。
社長は65歳。
事業承継について相談を受けていましたが、一つだけ特徴がありました。
後継者は決まっていたのです。
娘婿への事業承継
社長には4人の娘さんがいました。
長女は東京で家庭を持ち、
次女も東京在住。
三女は関西で医師として活躍していました。
唯一、会社との接点があったのが四女でした。
四女は会社の従業員と結婚。
社長は早くから、
「彼に会社を継がせる」
と決めていました。
社内でも後継者として公表し、
取引先も金融機関も、その認識でした。
社長の強い想い
社長は生前からこう言われていました。
「株も四女ではなく、娘婿に渡したい」
経営を担うのは娘ではなく娘婿。
だから株式も経営者本人に持たせたい。
その考え自体は合理的です。
実際、多くの中小企業で採用される考え方でもあります。
そして突然の出来事
しかし、その矢先でした。
社長が急逝。
事業承継は一気に現実の問題となりました。
幸いにも遺言が整備されており、
自社株の70%は娘婿へ承継されました。
形式的には、
「事業承継成功」
に見えました。
ところが…
しばらくして耳に入ってきたのは、
四女夫婦の離婚話
でした。
私は思わず考え込みました。
もし離婚が成立したらどうなるのか。
もし新たな家族関係が生まれたらどうなるのか。
もし株式がさらに相続されたらどうなるのか。
事業承継は終わっていなかった
多くの経営者は、
・後継者を決める
・株式を渡す
・遺言を書く
ここで事業承継が終わったと思います。
しかし現実は違います。
事業承継は「人」が関わる問題です。
人の気持ちは変わります。
家族関係も変わります。
結婚もあれば離婚もあります。
病気もあれば事故もあります。
この案件が教えてくれたこと
私はこの案件を通じて改めて感じました。
「今の正解」が、10年後も正解とは限らない。
だからこそ、
事業承継は一度やって終わりではありません。
定期的に見直し、
環境変化に合わせて修正していく必要があります。
今週の提言
事業承継で一番危険なのは、
「決めたから安心」と思うことです。
会社も変わる。
家族も変わる。
人も変わる。
だから事業承継は、
「イベント」ではなく「継続的な経営課題」
なのです。
社長にお伝えしたいこと
遺言を書いた。
後継者も決めた。
株式も渡した。
それでも安心とは限りません。
未来は誰にも分からないからです。
だからこそ、
定期的な見直しと長期的な伴走支援が必要なのです。
事業承継に「完成」はありません。
それは、会社が続く限り続く経営課題なのです。
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