第16回 今週の提言(2026年7月28日号)

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会社は「利益」ではなく、「信用」で引き継がれる

―― 銀行員28年で学んだ、本当の企業価値

「会社の価値はいくらですか。」

事業承継やM&Aの相談を受けると、社長からよくこの質問をいただきます。

多くの方は、「利益が多い会社ほど価値が高い」と考えられます。

もちろん、利益は企業価値を判断する重要な要素です。

しかし、銀行員として28年間、そして独立して10年間、多くの中小企業を見てきた私は、もう一つの大切なものを見続けてきました。

それは、

「信用」

です。

銀行が融資を判断するとき、決算書だけを見ているわけではありません。

社長は約束を守る人か。

社員は会社に誇りを持って働いているか。

取引先との関係は良好か。

後継者は育っているか。

会社として、次の10年も成長できる体制があるか。

こうした目に見えないものを含めて、「この会社は信頼できるか」を見ています。

つまり、利益は会社の現在を表しますが、

信用は会社の未来を表しているのです。

私は銀行員時代、多くの会社を担当しました。

同じような売上、同じような利益でも、融資の判断が大きく違う会社がありました。

その違いは何だったのでしょうか。

社長の考え方です。

社員を大切にしている。

約束を必ず守る。

地域から信頼されている。

問題が起きても隠さずに相談してくれる。

こうした会社は、一時的に業績が悪くなっても、多くの人が支えようとします。

反対に、利益は出ていても、信用を失った会社は、一気に厳しい状況へ追い込まれていきます。

信用は、決算書には載りません。

しかし、会社の価値を支える最も大切な資産なのです。

事業承継も同じです。

後継者へ引き継ぐのは、

株式だけではありません。

会社だけでもありません。

社長が何十年もかけて築いてきた「信用」を引き継ぐことなのです。

だからこそ、後継者には経営のノウハウだけではなく、

経営者としての姿勢や理念、

社員との向き合い方、

地域との信頼関係、

取引先との絆も受け継いでほしいと思います。

信用は、一日では築けません。

しかし、失うのは一瞬です。

だからこそ、事業承継では「誰に株を渡すか」だけではなく、

「誰に信用を託すのか」

という視点が欠かせません。

私はこれまで、多くの会社が事業承継によって大きく成長する姿を見てきました。

その会社に共通していたのは、

利益だけを追いかけるのではなく、

信用を積み重ね続けていたことです。

利益は努力の結果です。

しかし、信用は生き方の結果です。

事業承継とは、

会社を引き継ぐことではありません。

社長が築き上げてきた信用を、未来へつないでいくことです。

それこそが、本当の企業価値であり、次の世代へ残すべき最大の財産ではないでしょうか。



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