第17回 「のれん」とは何か?

~なぜ純資産3億円の会社が10億円で売れるのか?~

M&Aの相談をしていると、社長からこんな質問を受けます。

「うちの会社は純資産が3億円あります。だったら会社の価値も3億円くらいですか?」

必ずしも、そうではありません。

例えば、純資産3億円の会社が10億円で評価されることもあります。

では、この差額は何なのでしょうか?

その会社が長年かけて築いてきた、決算書には十分に表れない価値です。

M&Aでは、こうした価値を考えるうえで「のれん」という言葉が登場します。



「のれん」とは?

会社には、決算書だけでは分からない価値があります。

例えば、

・長年積み上げてきた信用
・強いブランド力
・優良な取引先
・高い技術力やノウハウ
・優秀な社員や組織
・地域での知名度
・安定した顧客基盤
・将来の収益力

こうしたものは、会社にとって大きな財産です。

しかし、土地や預金、機械のように、その価値がそのまま貸借対照表に載っているわけではありません。

それでも買手から見れば、

「この会社なら将来も利益を生み出してくれる」

という価値があります。

これが「のれん」の背景にある考え方です。



なぜ純資産3億円の会社が10億円になるのか?

例えば、

純資産3億円、毎年安定して高い利益を出している会社があったとします。

買手が、

「この会社には強い顧客基盤がある」

「優秀な社員がいる」

「今後も安定して利益を生み出せる」

と評価すれば、純資産を大きく上回る価格で取引されることがあります。

つまり、

会社の値段は「今いくら持っているか」だけではなく、「これからいくら稼げるか」でも決まる

ということです。



第16回の「EBITDA倍率」ともつながる

前回お話ししたEBITDA倍率も、この考え方と深く関係しています。

M&Aでは、会社が本業から生み出す収益力を見て、そこに一定の倍率を掛けて企業価値を考える方法があります。

だからこそ、

同じ純資産3億円の会社でも、

「社長がいなければ売上が落ちる会社」と、

「社長がいなくても組織で利益を生み出せる会社」

では、評価が大きく違ってくる可能性があります。



社長が作るべきは「利益」だけではない

ここが重要です。

企業価値を高めたいのであれば、毎年の利益を増やすだけでは十分ではありません。

社長がいなくても回る組織を作る。

優秀な人材を育てる。

特定の取引先への依存を減らす。

自社独自の技術やブランドを育てる。

こうした積み重ねが、会社の「見えない価値」を高めます。

私は、この見えない価値こそ、社長が次の世代へ残すべき大切な財産だと思っています。



今週の結論

会社の価値は、決算書の純資産だけでは決まりません。

土地や預金だけでもありません。

信用、人材、技術、ブランド、顧客、そして将来の収益力。

こうした目に見えない資産が、企業価値を大きく左右します。

事業承継とは、株式を後継者へ渡すことだけではありません。

「価値のある会社」を次の世代へ渡すことです。

社長、もし今あなたの会社を第三者が評価するとしたら、

決算書に載っていない「のれん」に、いくらの値段がつくでしょうか?



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