第19回 高く評価される会社、低く評価される会社の違い

~企業価値を左右する「社長依存」とは?~

「うちの会社は毎年しっかり利益を出している。だから高く評価されるはずだ。」

そう考えている社長は多いと思います。

確かに、利益は企業価値を考えるうえで非常に重要です。

しかし、M&Aの現場では、同じような売上、同じような利益を出している会社でも、
評価額に大きな差がつくことがあります。

なぜでしょうか。

その大きな理由の一つが、

「社長がいなくても、この会社は同じように稼げるのか?」

という問題です。



社長依存が強い会社は評価されにくい

中小企業では、

・営業は社長

・大口取引先との関係も社長

・銀行交渉も社長

・採用も社長

・最終判断もすべて社長

という会社が珍しくありません。

社長の能力が高ければ高いほど、会社は成長します。

しかし、M&Aや事業承継という視点から見ると、ここに大きな問題があります。

買手はこう考えるからです。

「この社長が辞めた後も、本当に同じ利益を出せるのか?」

答えが「分からない」となれば、当然、会社の評価は下がります。



「優秀な社長」と「価値の高い会社」は違う

ここは経営者にぜひ知っていただきたいところです。

社長が何でもできる会社が、必ずしも企業価値の高い会社ではありません。

むしろ、

社長がいなくても会社が回る仕組みを作った社長の方が、価値の高い会社を残している

とも言えます。

例えば、

・幹部社員が育っている

・営業の仕組みができている

・顧客情報が会社に蓄積されている

・権限委譲が進んでいる

・経営数字が見える化されている

・特定の社員や取引先への依存が少ない

こうした会社は、経営者が交代しても事業を継続しやすいため、買手からも高く評価されやすくなります。



EBITDAが同じでも「倍率」は違う

第16回で「EBITDA倍率」についてお話ししました。

例えば、EBITDAが1億円の会社が2社あったとします。

A社は社長が営業から経営判断まですべて行っている。

B社は経営幹部が育ち、組織で会社を動かしている。

同じ1億円のEBITDAでも、買手から見たリスクは全く違います。

だから、

同じ利益を出していても、企業価値は同じにはならない

のです。

企業価値を高めるには、利益を増やすだけでなく、「倍率が上がる会社」をつくることが重要なのです。



企業価値を高める経営とは?

私は、事業承継を考え始めてから会社を整えるのでは遅いと思っています。

60歳、70歳になってから慌てて後継者を育てるのではなく、会社が元気なうちから、

「自分がいなくても成長できる会社」

をつくっておく。

これこそ、本当の事業承継対策ではないでしょうか。

そして、それはM&Aのためだけではありません。

社長依存を減らすことは、会社を強くし、社員を育て、次の成長にもつながります。



今週の結論

高く評価される会社と、低く評価される会社。

その違いは、決算書だけでは分かりません。

重要なのは、

「社長がいなくなっても、この会社は成長できるのか?」

ということです。

社長自身が会社最大の強みであることは素晴らしい。

しかし同時に、社長自身が会社最大のリスクになってはいけません。

事業承継とは、後継者を決めることだけではありません。

社長がいなくても成長できる会社をつくること。

それこそが、企業価値を高め、次の世代に強い会社を残すための、社長の大切な仕事なのです。



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