第22回 今週の提言(2026年9月8日号)

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会社を子どもに継がせることが、本当に親の愛情なのか

――「継がせたい」と「継ぎたい」は、同じではない

事業承継の相談をしていると、社長からこんな話を聞くことがあります。

「できれば息子に継いでもらいたい。」

「せっかくここまで会社を大きくしたのだから、子どもに残してやりたい。」

その気持ちは、よく分かります。

自分が何十年も苦労して育ててきた会社です。

社員もいる。

取引先もいる。

地域とのつながりもある。

そして何より、自分の人生そのものと言ってもいい会社です。

それを自分の子どもに引き継いでもらいたい。

親として、そう考えるのは自然なことだと思います。

しかし私は、事業承継を考える社長に、一度だけ立ち止まって考えていただきたいことがあります。

「子どもに会社を継がせることが、本当にその子の幸せなのか。」

ということです。

親が「継がせたい」と思っていることと、

子ども自身が「継ぎたい」と思っていることは、

必ずしも同じではありません。

さらに言えば、

「継ぎたい」と「経営できる」も、同じではありません。

ここは、とても大切なところです。

会社経営は簡単ではありません。

売上をつくらなければならない。

社員の生活を守らなければならない。

銀行との付き合いもある。

取引先との関係もある。

資金繰りに悩むこともある。

時には社員を叱らなければならない。

そして最後は、誰にも相談できない決断を自分一人でしなければならないこともあります。

親である社長自身が、一番よく分かっているはずです。

だからこそ、

「自分が苦労して築いた会社だから、子どもに継がせたい」

という気持ちだけで決めてはいけないと私は思います。

むしろ親だからこそ、

「本当にこの子に、この人生を背負わせていいのか」

と考える必要があります。

一方で、子どもだから経営者になれないということでもありません。

幼い頃から会社を見て育ち、社員から可愛がられ、会社に愛着を持ち、

「自分がこの会社をもっと良くしたい。」

そう思っている後継者もたくさんいます。

そういう場合には、ぜひ時間をかけて育ててほしいと思います。

大切なのは、

「子どもだから継がせる」のではなく、「この人なら会社を託せる」と判断して継がせることです。

親族内承継には、大きなメリットがあります。

会社の歴史や理念を引き継ぎやすい。

社員や取引先から理解を得やすい。

長期的な視点で経営できる。

ファミリービジネスだからこその強さもあります。

しかし、それは「子どもが継ぐこと」が目的なのではありません。

会社が次の世代でも発展していくことが目的です。

ここを間違えてはいけません。

私は、事業承継を考える時には、

「誰に継がせるか」

から始めるのではなく、

「10年後、この会社をどんな会社にしたいのか」

から考えてほしいと思っています。

売上をもっと伸ばしたいのか。

地域で長く残る会社にしたいのか。

新しい事業に挑戦したいのか。

全国へ展開したいのか。

他社と組んでさらに成長したいのか。

その未来像を描いたうえで、

「その会社を率いるのに最もふさわしい人は誰なのか。」

を考える。

その答えが子どもであれば、素晴らしいことです。

しかし、そうでなければ、

役員や社員への承継もある。

外部から経営者を迎える方法もある。

M&Aという選択肢もある。

場合によっては、所有と経営を分けることも考えられます。

選択肢は一つではありません。

私は、

「会社を子どもに残すこと」と「会社の価値を子どもに残すこと」は違う

と思っています。

子どもが会社を経営することを望んでいないのであれば、無理に経営を背負わせる必要はありません。

会社を第三者に託し、その結果として生まれた資産を家族へ残す。

これも立派な事業承継です。

親の愛情とは、

自分の人生を子どもに引き継がせることではなく、

子ども自身が、自分の人生を選べる状態をつくってあげること

なのかもしれません。

そして経営者としての責任とは、

会社を誰かに押しつけることではなく、

会社が自分の後も成長できる道を選ぶこと

ではないでしょうか。

親として何を残すのか。

経営者として何を残すのか。

この二つを分けて考えてみる。

そこから、本当の事業承継が始まると私は思います。

「子どもだから継がせる。」

その前に、一度聞いてみてください。

「お前は、この会社を本当に継ぎたいのか。」

そして同時に、社長自身にも問いかけてみてください。

「私は、会社を継がせたいのか。それとも、この子の幸せを願っているのか。」

簡単に答えが出る問いではありません。

だからこそ、家族で話し合う価値があるのです。

事業承継とは、会社を残すことだけではありません。

会社の未来と、家族の未来。その両方を守るための決断なのです。



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