第9回 自社株を譲渡する時、「誰に渡すか」で価格も税金も変わる


~同じ株でも、相手が変われば“別の世界”になります~

「自社株を後継者へ渡したい」

事業承継では当たり前の話ですが、
ここで非常に重要なポイントがあります。

それは、

“誰に譲渡するか”によって、株価の考え方も税金も大きく変わる

ということです。

この違いを理解しないまま進めると、
後から思わぬ税負担が発生するケースがあります。



① 後継者個人へ譲渡する場合

最もオーソドックスな方法です。

この場合、通常は
相続税評価額をベースに価格を考えます。

多くの中小企業では、

・類似業種比準価額
・純資産価額

などを使って評価されます。

特に「大会社」に該当する場合は、
類似業種比準価額が低くなるケースも多く、
比較的低い価格で移転できる可能性があります。

そのため、

親族内承継では、この方法が使われることが非常に多いのです。



② 持株会社へ譲渡する場合

最近、銀行がよく提案するスキームです。

後継者が持株会社を設立し、
その会社へ株式を譲渡する方法です。

しかしここで重要なのは、

相手が“法人”になる

という点です。

この場合、税務上は
法人税法上の時価が問題になります。

つまり、

単純な相続税評価では済まないケースが多いのです。

実務上は、

・類似業種比準価額
・純資産価額

の平均程度になることも多く、
後継者個人への譲渡より高くなるケースがあります。

つまり、

同じ株でも、譲渡先が法人になるだけで価格が変わる

可能性があるのです。



③ 金庫株(自己株式)にする場合

会社自身が株式を買い取る方法です。

オーナー側から見れば、
株式を現金化できるメリットがあります。

しかし注意点もあります。

場合によっては、

・配当課税扱い
・みなし配当課税

が発生するケースがあるため、
税負担が重くなることがあります。

また、会社側には多額の資金負担が発生します。

つまり、

会社のキャッシュ体力を十分考慮する必要がある

ということです。



「誰に渡すか」は経営戦略

ここで重要なのは、

「どれが正解か?」

ではありません。

会社の状況、

・株価
・後継者
・キャッシュフロー
・将来の成長戦略
・M&A可能性

によって、最適解は変わります。

だからこそ、

“とりあえず銀行提案で進める”ことが危険

なのです。



今週の結論

自社株は、単なる“財産”ではありません。

それは、

会社の支配権そのもの

です。

そして、自社株は

・誰に渡すか
・どの方法で渡すか

によって、

価格も税金も大きく変わります。

事業承継で最も危険なのは、
「よく分からないまま進めること」です。

社長自身が基本を理解すること。
そこから、本当の事業承継対策は始まります。



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