第23回 今週の提言(2026年9月15日号)

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「子どもだから継がせる」時代は終わりつつある

―― これからの事業承継で問われるのは「経営者としての資質」

「会社は長男に継がせる。」

かつての中小企業では、ごく自然な考え方だったと思います。

社長の子どもが会社に入り、やがて専務になり、そして社長になる。

株式も子どもへ渡す。

いわば、家業を次の世代へ引き継いでいくという事業承継です。

もちろん、私は親族内承継そのものを否定しているわけではありません。

子どもが会社を理解し、社員や取引先から信頼され、経営者として十分な資質を備えているのであれば、
親族内承継は非常に有力な選択肢です。

しかし、私は最近強く感じています。

「子どもだから継がせる」という事業承継は、もう通用しにくい時代になってきたのではないか。

その最大の理由は、会社経営そのものが、以前とは比較にならないほど難しくなっているからです。

円安。

インフレ。

原材料価格の上昇。

人件費の上昇。

少子高齢化。

人手不足。

国内市場の縮小。

そして、テクノロジーの急速な進化。

昨日までの成功体験が、明日も通用するとは限りません。

この環境の中で会社を率いる経営者には、これまで以上に研ぎ澄まされた経営感覚が求められます。

数字を読む力。

環境変化を感じ取る力。

人を動かす力。

そして、何よりも「決断する力」。

さらに、社長一人ですべてを判断する時代でもありません。

税務、法務、財務、M&A、IT、人事――。

それぞれの分野で信頼できるブレーンを持ち、その意見を聞きながら、最後は自分で決断する。

経営者としての資質と、それを支えるブレーンの存在。

これからの中小企業経営には、この両方が欠かせないと私は思っています。

だからこそ、事業承継で最初に考えるべき問いも変わってきます。

「子どもがいるか。」

ではありません。

「次の10年、この会社を経営できる人は誰なのか。」

です。

私は、ここを間違えると非常に怖いと思っています。

子どもだからという理由だけで会社を継がせる。

本人も「親の会社だから」という理由で引き受ける。

しかし、経営者としての覚悟や資質が十分でなければ、苦しむのは後継者本人です。

そして、その判断の影響を受けるのは後継者だけではありません。

社員とその家族。

取引先。

金融機関。

そして創業家。

多くの人の人生が、経営者一人の判断に左右されます。

実際、私は近年、「子どもに継がせることが、本当に正しかったのだろうか」と感じるケースを見ることが
増えてきました。

親として会社を残してやりたい。

その気持ちは理解できます。

しかし、経営者として考えれば、

会社を子どもに渡すことより、会社を未来へ残すことの方が重要なのではないでしょうか。

事業承継を取り巻く環境も、大きく変わろうとしています。

これまでの事業承継対策では、

「自社株の評価額はいくらか。」

「どうすれば株価を引き下げられるか。」

「どうすれば税負担を抑えて子どもへ株式を渡せるか。」

という議論が中心になりがちでした。

もちろん、今後も株式評価や税負担を考えることは重要です。

しかし、非上場株式を取り巻く評価の考え方や環境が変化していけば、事業承継そのものの発想も変えていく
必要があります。

私は、これからは、

「株価を下げて、子どもへ渡す」ことを中心に考える時代から、「誰がこの会社を最も成長させられるのか」を
考える時代へ移っていく

のではないかと思っています。

そこで重要になるのが、

後継者候補の育成。

役員・従業員への承継、いわゆるEBO。

そして、第三者へ会社を託すM&Aです。

つまり、

「誰に株を渡すか」から、「誰に経営を託すか」へ。

事業承継の主役が変わっていくのです。

子どもに経営者としての資質があるなら、時間をかけて育てればいい。

社員の中に優秀な人材がいるなら、その人に託す方法を考える。

社内に適任者がいなければ、M&Aによって、会社をさらに成長させてくれる企業へ託すことも考える。

大切なのは、最初から答えを「子ども」に決めてしまわないことです。

会社を守ること。

社員を守ること。

そして、後継者となる子どもの人生も守ること。

そのために、

「誰が次の経営者として最もふさわしいのか」

を冷静に考える。

私は、それがこれからの事業承継だと思っています。

事業承継は、相続対策ではありません。

ましてや、単なる株式移転でもありません。

次の経営者を選び、育て、会社を次の成長ステージへ進める経営戦略です。

「子どもだから継がせる」から、

「経営者としての資質がある人に託す」へ。

事業承継の常識そのものが、今、大きく変わろうとしているのではないでしょうか。



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