第28回:事業承継は「引退」ではない

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― 会社を飛躍させる最大のチャンス

銀行員時代から独立後まで、私は20年以上にわたり、数多くの中小企業オーナーの事業承継に関わってきた。

その中で、ずっと疑問に思っていたことがある。

なぜ、事業承継というと「相続」「税金」「引退」の話ばかりになるのだろうか。

税理士は相続税や贈与税の対策を考える。銀行は自社株対策や資金調達を提案する。

もちろん、どれも重要である。

しかし、私はいつも思っていた。

「会社の将来は、いったい誰が考えるのだろう。」

事業承継の本来の目的は、株式を移すことでも、税金を安くすることでもない。

会社を次の世代へ引き継ぎ、さらに成長させることではないか。

私が関わってきた中小企業には、素晴らしい技術や商品、優秀な社員を持ちながら、
将来の方向性が定まっていない会社が少なくなかった。

一方で、社長が決断したことによって、会社が大きく変わる場面も見てきた。

後継者を決める。

株主構成を整理する。

持株会社を設立する。

不採算事業を切り離す。

M&Aによって新しい事業を取り込む。

こうした取り組みは、単なる事業承継対策ではない。立派な経営戦略である。

特に、これからの中小企業を取り巻く環境は厳しい。

人口減少、人手不足、原材料価格の高騰、国内市場の縮小。

今までと同じ経営を続けているだけでは、会社の未来を守ることが難しくなっている。

だからこそ私は、事業承継を会社の経営を見直す絶好の機会にすべきだと考えるようになった。

そして、もう一つ確信していることがある。

事業承継の主役は、専門家ではなく社長自身だということだ。

専門家に任せることは必要である。しかし、任せきりにしてはいけない。

自社株がいくらなのか。

会社の本当の価値はいくらなのか。

後継者に何を託したいのか。

社長自身が理解し、決断しなければ、会社は変わらない。

私は銀行員時代に28年間、そして独立後も、数多くの経営者から大切なことを教えていただいた。

その経験から、今では自信を持って言える。

事業承継は、社長の引退準備ではない。会社の第二創業の出発点である。

社長の決断一つで、会社の未来は大きく変わる。

だからこそ、元気なうちに、会社の未来と本気で向き合っていただきたい。

それが、私がこれからも中小企業オーナーに伝え続けたいことである。

次回予告

第29回 私が目指すファミリービジネス支援

事業承継だけでなく、経営、資産、家族の問題まで総合的に支援したい。

銀行員時代から抱き続けてきた思いを、どのような形で実現していくのか。

私がこれから目指す仕事について書いてみたい。