第24回 今週の提言(2026年9月22日号)

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事業承継から逃げ続けると、最後は「打つ手」がなくなる

―― 会社、家族、そして社長自身を守るために、今こそ向き合う

少し厳しいことを申し上げます。

事業承継に失敗すれば、会社を潰すことがあります。

そして、

事業承継対策を間違えれば、家族まで壊してしまうことがあります。

私は銀行員時代から30年以上、中小企業の経営者と向き合ってきました。

その中で感じるのは、事業承継ほど「問題が起きる前」と「問題が起きた後」で、
打てる手が大きく変わる経営課題はないということです。

会社は黒字。

社長も元気。

子どももいる。

だから、

「まだ大丈夫。」

しかし、本当にそうでしょうか。



事業承継に失敗すると、会社そのものが危なくなる

事業承継とは、単に社長の椅子を次の人へ渡すことではありません。

誰が経営するのか。

誰が株式を持つのか。

誰が経営権を握るのか。

社員や取引先は、新しい経営者についてきてくれるのか。

金融機関は、引き続き会社を支えてくれるのか。

これらがすべてつながっています。

だから、後継者選びを間違える。

株式を不用意に分散させる。

経営権の移行に失敗する。

こうしたことが重なると、それまで何十年もかけて築いてきた会社が一気に不安定になることがあります。

事業承継は、会社の存続を左右する経営問題なのです。



事業承継対策に失敗すると、家族まで壊れる

もう一つ、私が怖いと思っていることがあります。

それが家族の問題です。

「うちの家族は仲がいいから大丈夫。」

そうおっしゃる社長は少なくありません。

しかし、相続が発生し、数千万円、数億円という財産と自社株が絡んだ瞬間、
それまで表面化していなかった問題が出てくることがあります。

会社を継ぐ子。

会社を継がない子。

株式をもらう子。

財産をもらう子。

そこに、それぞれの配偶者まで関係してくる。

親が元気な時には問題にならなかったことが、親がいなくなった瞬間に争いになる。

私は、

事業承継とは「会社の問題」であると同時に、「家族の問題」でもある

と思っています。



基本的な知識がなければ、社長は判断できない

だからこそ、私はこの「今週の提言」で何度も申し上げています。

社長自身が、事業承継の基本を知ってください。

専門家になる必要はありません。

しかし、

自社株はどう評価されるのか。

株主構成にはどんなリスクがあるのか。

相続が起きればどうなるのか。

親族内承継、EBO、M&Aにはどんな違いがあるのか。

持株会社や組織再編は何のために使うのか。

この程度の基本的な知識がなければ、専門家から提案を受けても、その提案が自社にとって本当に良いものなのか判断できません。

知らないままでは、決断できないのです。



事業承継で最も重要な資源は「時間」

そして、事業承継には時間が必要です。

後継者を育てる。

経営を任せてみる。

失敗も経験させる。

株主構成を整理する。

家族で話し合う。

組織を見直す。

必要であれば会社を再編する。

M&Aも比較してみる。

これらを半年や一年ですべて終わらせることは困難です。

だから、

早く始めるほど選択肢が増え、遅くなるほどリスクが高まる。

これは事業承継の大原則だと私は思っています。



事業承継から逃げるほど、コストは大きくなる

「まだ考えたくない。」

「面倒だから来年にしよう。」

「税金がかかるから、そのうち考えよう。」

気持ちは分かります。

しかし、問題から逃げても、問題そのものが消えるわけではありません。

むしろ時間が経つことで、

株価が上がる。

株主が増える。

社長が高齢になる。

後継者育成の時間がなくなる。

家族の事情が変わる。

会社を取り巻く環境が変わる。

そして最後には、

「もっと早くやっておけば選べた方法」が、選べなくなります。

私はこれを「事業承継コストの増大」と考えています。

お金だけの話ではありません。

時間、選択肢、会社の成長機会、そして家族関係まで含めたコストです。

最も怖いのは、

「もう打つ手がありません」

という状態になってから相談に来られることです。



そして、自社株評価そのものも変わろうとしている

もう一つ、社長に知っておいていただきたい大きな動きがあります。

現在、国税庁では「取引相場のない株式」、つまり非上場株式の評価方法について見直しの議論が
進められています。

収益性をより重視した評価方法など、これまでとは異なる考え方も検討されています。

まだ最終的な制度が確定したわけではありません。

しかし私は、この議論を単なる「株価計算方法の変更」と捉えてはいけないと思っています。

これまでのように、

「株価を計算する。」

「株価を引き下げる。」

「税負担を抑えて子どもへ株を渡す。」

それだけを中心にした事業承継から、

誰を経営者にするのか。
会社をどう成長させるのか。
親族内承継なのか、EBOなのか、M&Aなのか。


事業承継そのものを経営戦略として考える時代へ、さらに進んでいくのではないでしょうか。



事業承継から、逃げないでください

少し厳しい言い方になりました。

しかし、それだけ重要な問題だからです。

事業承継に失敗すれば、会社を失うことがある。

対策を間違えれば、家族を壊すこともある。

知らなければ、判断できない。

時間を失えば、リスクは高まる。

そして逃げ続ければ、コストは増え、最後には選択肢そのものがなくなってしまう。

だからこそ、

会社が元気な今。
社長が元気な今。
家族で話ができる今。


始めてほしいのです。

事業承継は、社長から逃げていきません。

しかし、

社長が使える「時間」と「選択肢」は、確実に減っていきます。

会社を守るために。

家族を守るために。

そして、次の世代へもっと強い会社を残すために。

そろそろ本気で、事業承継と向き合いませんか。



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