~事業会社と資産管理会社を分ける意味~
「この土地と建物、会社に持たせたままでいいんでしょうか?」
事業承継の相談を受けていると、私はこの問題にたびたび出会います。
創業して30年、40年と経過した会社では、本業で利益を積み上げ、その資金で土地や建物を購入しているケースが少なくありません。
工場、倉庫、本社だけではありません。
賃貸マンション、アパート、テナントビル、遊休地など、本業とは直接関係のない不動産まで事業会社が
所有していることがあります。
経営している間は、それほど問題を感じないかもしれません。
しかし、事業承継やM&Aを考え始めると、この不動産が大きな論点になることがあります。
① 本業に、その不動産は本当に必要ですか?
まず考えていただきたいのは、
「この不動産は、本業を続けるために必要なのか?」
ということです。
工場や店舗など、本業に不可欠な不動産もあります。
一方で、会社が長年蓄積してきた余剰資金で購入した賃貸不動産などは、本業とは切り離して考えられる場合が
あります。
ところが、一つの会社の中にすべて入っていると、
「事業」と「資産」の境目が分からなくなってしまいます。
② 後継者に何を引き継がせるのか?
例えば、
本業を長男に承継させるとします。
では、会社が保有している賃貸マンションや遊休地まで、すべて長男に引き継がせる必要があるでしょうか。
他にも子どもがいるなら、
「長男には事業」
「他の子どもには別の資産」
という考え方もできます。
事業と資産を整理しておけば、会社の承継と家族の財産承継を分けて考えやすくなります。
これは将来の相続争いを防ぐという意味でも重要です。
③ M&Aでは、さらに重要になる
M&Aを考える場合はどうでしょう。
買手が欲しいのは、基本的には利益を生み出す事業です。
例えば、製造業を買いたい会社が、
「本社工場は必要ですが、賃貸マンションまでは要りません」
ということは十分考えられます。
不要な資産まで事業会社に入っていると、取引の設計や価格交渉が複雑になることがあります。
そこで、M&Aを検討する前に、
「売る事業」と「オーナー側に残す資産」
を整理するという発想が重要になります。
④ 資産管理会社という考え方
そこで選択肢になるのが「資産管理会社」です。
事業会社には、本業に必要な事業や資産を集める。
資産管理会社には、賃貸不動産や金融資産などを持たせる。
こうして役割を明確にすることで、
事業会社は「事業で稼ぐ会社」、資産管理会社は「資産を管理する会社」
と整理できます。
もちろん、不動産を別会社へ移せば税金や登記費用などが発生する場合があります。
会社分割などを活用する場合にも、税務・法務・金融機関との契約などを慎重に確認しなければなりません。
だから、単純に「不動産を別会社に移しましょう」という話ではありません。
⑤ 会社が元気なうちに整理する
私は、ここが非常に重要だと思っています。
社長が70代、80代になり、いよいよ事業承継という段階になってから、
「この不動産をどうしましょう」
「この会社をどう分けましょう」
と考え始めても、できることは限られてきます。
組織再編にも時間がかかります。
後継者や家族との話し合いにも時間が必要です。
だからこそ、会社が元気で、社長自身も元気なうちに、
「事業」と「資産」を一度棚卸しする。
これが大切なのです。
今週の結論
会社に不動産を持つことが悪いわけではありません。
問題は、
「なぜ、その不動産を事業会社が持っているのか」
を説明できるかどうかです。
本業に必要な不動産なのか。
将来の成長のために必要なのか。
単に長年会社に置かれたままになっている資産なのか。
そして、
その不動産を、次の世代の誰に引き継ぐのか。
ここまで考えておく必要があります。
事業承継とは、会社の株式を渡すだけではありません。
「事業を誰に託すのか」と「資産を誰に残すのか」を分けて考える。
その整理ができれば、親族内承継だけでなく、M&Aや第三者承継など、会社の将来の選択肢も広がります。
社長、会社の貸借対照表を一度開いてみてください。
そこに載っている資産は、本当にすべて「次の経営者に渡すべき資産」でしょうか?
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