第23回 会社にお金を貯めすぎていませんか?

~余剰資金が事業承継を難しくすることもある~

「借金はほとんどない。現預金も十分にある。うちは財務内容には問題ありません」

長年、堅実な経営を続けてきた社長ほど、このような会社をつくっています。

もちろん、素晴らしいことです。

しかし、事業承継という視点から見ると、会社にお金を貯め続けることが、思わぬ問題につながる場合が
あります。

それが「自社株」です。



① 儲かるほど、自社株が高くなる?

会社が毎年利益を出し、その利益を内部留保として蓄積していけば、会社の純資産は増えていきます。

当然、現預金や有価証券などの資産も増えていきます。

その結果、会社の状況によっては自社株評価も高くなっていきます。

つまり、

「良い会社をつくった結果、株式を後継者へ渡しにくくなる」

ということが起こり得るのです。

これが非上場企業の事業承継の難しいところです。



② 「会社のお金」を全部残す必要があるのか?

そこで社長に考えていただきたいことがあります。

会社に5億円の現預金があるとして、

本当に、その5億円すべてが事業に必要でしょうか?

前回お話しした「ネットキャッシュ」にもつながります。

会社には、給与、仕入代金、税金、借入返済などのために、一定の運転資金が必要です。

さらに、将来の設備投資や新規事業に備える資金も必要でしょう。

しかし、それを超えて長年使われていない現預金や有価証券、不動産があるなら、

「事業に必要な資産」と「余剰資産」を一度分けて考える必要があります。



③ 余剰資金は「減らす」のではなく「活かす」

ここを間違えてはいけません。

株価を下げるために、会社のお金を無理に使えばよいという話ではありません。

大切なのは、

「この資金を会社の未来のために、どう活かすのか」

です。

例えば、

・新しい設備への投資
・人材採用や人材育成
・新規事業への投資
・M&Aによる事業拡大
・役員退職金
・適切な配当

など、さまざまな選択肢があります。

さらに会社の状況によっては、資産管理会社や会社分割などを活用し、「事業」と「資産」を整理するという
考え方もあります。



④ 「株価を下げる経営」から「企業価値を高める経営」へ

私は、これからの事業承継では、この考え方が非常に重要になると思っています。

従来は、

「どうすれば自社株を安くできるか」

という株価対策が中心でした。

しかし、本来、社長が目指すべきなのは、

会社の価値を下げることではなく、企業価値を高めることです。

余剰資金を眠らせるのではなく、成長投資に振り向ける。

その結果、利益が増え、社員が育ち、事業が強くなれば、会社の未来は大きく変わります。



今週の結論

会社にお金があることは、悪いことではありません。

問題は、

「そのお金を何のために持っているのか」

です。

事業に必要なお金はいくらなのか。

余剰資金はいくらなのか。

その余剰資金を、次の成長にどう使うのか。

そして、どのような会社の姿で次世代へ引き継ぐのか。

事業承継とは、単に株式を後継者へ渡すことではありません。

会社に蓄積した「資産」と、会社が生み出す「事業」をどう次世代へつなぐのか。

そこまで考えて初めて、本当の事業承継戦略になるのだと思います。

社長、会社に眠っているお金を、そろそろ「未来のために使うお金」に変えてみませんか?



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