第25回 今週の提言(2026年9月29日号)

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事業承継は、会社を大きく飛躍させるチャンスである

――「守るための承継」から「成長するための承継」へ

前回、少し厳しいことを書きました。

事業承継に失敗すれば、会社そのものを危うくすることがある。

事業承継対策を間違えれば、家族の関係まで壊してしまうことがある。

そして、問題から逃げ続ければ、時間と選択肢を失い、最後には打つ手がなくなることもある。

これは、私がこれまで多くの中小企業を見てきて感じていることです。

しかし、今回は反対の話をしたいと思います。

私は、事業承継を決して「怖い問題」だけだとは考えていません。

むしろ、

事業承継は、会社を大きく飛躍させる絶好のチャンスです。



なぜ、事業承継が会社を変えるのか

普段の経営では、なかなか会社の根本まで見直す機会はありません。

売上をどうするか。

利益をどうするか。

資金繰りは大丈夫か。

採用をどうするか。

目の前の問題への対応で、社長の毎日は過ぎていきます。

ところが、事業承継を本気で考え始めると、もっと根本的な問いに向き合うことになります。

「この会社は、何のために存在しているのか。」

「10年後、どんな会社にしたいのか。」

「どの事業を伸ばすのか。」

「どの事業から撤退するのか。」

「次の経営者は誰がいいのか。」

「今の組織のままで成長できるのか。」

事業承継を考えることは、

会社の未来をゼロから考え直すこと

でもあるのです。



後継者が変われば、会社も変わる

私は、事業承継で一番大きな変化は、経営者が変わることだと思っています。

現社長には、これまで会社を成長させてきた経験があります。

一方、次の経営者には、次の時代をつくる役割があります。

今までの成功体験をそのまま引き継ぐだけではありません。

新しい商品。

新しい市場。

新しい人材。

DXやAI。

M&A。

海外展開。

これまでの会社にはなかった発想を取り入れる。

そこに事業承継の大きな可能性があります。

だから私は、

後継者には「先代と同じ経営者」になってもらう必要はない

と思っています。

守るべきものは守る。

変えるべきものは大胆に変える。

それができれば、事業承継は「世代交代」ではなく、

第二創業

になります。



会社の形そのものを変えるチャンスでもある

事業承継を考える時には、経営者だけでなく、会社の形そのものを見直すこともできます。

例えば、

持株会社をつくる。

複数の事業を会社分割する。

不動産と事業を分ける。

成長事業へ経営資源を集中する。

新しい会社をつくる。

他社をM&Aする。

外部資本を入れる。

場合によってはIPOを目指す。

こうした選択肢は、単なる「事業承継対策」ではありません。

次の10年をつくるための経営戦略です。

私は、ここに事業承継の面白さがあると思っています。



「誰に渡すか」だけではなく、「どういう会社を渡すか」

事業承継の相談では、

「誰に会社を継がせるか。」

という話から始まることが多いものです。

しかし私は、その前にもう一つ考えていただきたいと思っています。

「どんな会社にして、次の経営者へ渡すのか。」

ということです。

借入が多い会社をそのまま渡すのか。

不採算事業を抱えたまま渡すのか。

社長に仕事が集中した会社を渡すのか。

株主がバラバラの会社を渡すのか。

それとも、

事業を整理し、

財務を強くし、

組織をつくり、

経営幹部を育て、

次の経営者が思い切って挑戦できる会社にして渡すのか。

同じ事業承継でも、まったく違います。

現社長の最後の大仕事は、

「会社を渡すこと」ではなく、「次の経営者が成長させられる会社にして渡すこと」

ではないでしょうか。



親族内承継だけが答えではない

そして、第23回でも申し上げました。

これからは、

「子どもだから継がせる。」

という時代から、

「経営者として最もふさわしい人に託す。」

という時代へ変わっていくと私は考えています。

子どもに経営者としての資質があるなら、育てればいい。

社員の中に優秀な人材がいるなら、EBOという方法もある。

社内に適任者がいなければ、M&Aによって会社を成長させてくれる第三者へ託すこともできる。

重要なのは、

会社を誰に渡すかではなく、会社をどうすれば一番成長させられるか。

この視点です。



事業承継は「守り」ではなく「攻め」の経営戦略

これまでの事業承継は、

自社株を評価する。

株価を下げる。

相続税や贈与税を考える。

そして子どもへ株式を渡す。

こうした「守り」の議論が中心になりがちでした。

もちろん、それらも重要です。

しかし、私はこれからの事業承継は、それだけでは足りないと思っています。

後継者を育てる。

組織を変える。

事業を再編する。

M&Aを活用する。

外部人材を登用する。

必要であれば外部資本も使う。

そして、新しい経営者が次の成長へ挑戦する。

つまり、

事業承継を「相続対策」から「成長戦略」へ変える。

これが、これからの中小企業に必要な発想ではないでしょうか。



社長が変われば、会社の未来も変わる

事業承継を、

「いつかやらなければならない面倒な問題」

と考えるのか。

それとも、

「会社をもう一度つくり直すチャンス」

と考えるのか。

この違いは、とても大きいと思います。

事業承継は、社長の人生の終わりではありません。

会社にとっては、

新しい時代の始まりです。

だから私は、事業承継を「引退準備」と呼びたくありません。

第二創業の準備です。

今の会社をそのまま次の世代へ渡す必要はありません。

もっと強くして渡せばいい。

もっと成長できる会社にして渡せばいい。

そして、次の経営者には、さらにその先へ進んでもらえばいい。

事業承継をきっかけに、

会社を変える。

組織を変える。

経営者を育てる。

そして、会社をもう一段成長させる。

事業承継は、会社を大きく飛躍させるチャンスです。

私は、そういう事業承継を一社でも多く実現したいと思っています。



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