第24回 会社分割で「事業」と「資産」を分けるとは?

~会社を二つに分けることで、事業承継の選択肢が広がる~

「会社には現預金も不動産もたくさんある。でも、後継者に本当に引き継いでほしいのは事業なんです」

事業承継の相談をしていると、このような会社は少なくありません。

長年利益を積み上げてきた会社ほど、

・本業で使っている資産
・多額の現預金
・有価証券
・賃貸不動産
・保険積立金

など、さまざまな資産を一つの会社の中に抱えています。

そこで知っていただきたい方法の一つが、「会社分割」です。



① 会社分割とは?

会社分割というと、

「会社を半分にしてしまうの?」

と思われるかもしれません。

簡単に言えば、

会社が持っている事業や、それに関連する権利・義務を、別の会社へ承継させる組織再編の方法です。

例えば、一つの会社に、

「本業」と「賃貸不動産事業」

があるとします。

これを会社分割によって、

事業会社と資産保有会社

というように整理できる場合があります。

会社そのものを壊すのではなく、会社の中身を目的に応じて組み替えるというイメージです。



② なぜ事業と資産を分けるのか?

事業承継で重要なのは、

「後継者に何を引き継がせるのか」

を明確にすることです。

例えば、後継者には本業を承継させたい。

しかし、先代が長年蓄積した金融資産や賃貸不動産まで、すべて本業と一緒に承継させる必要があるでしょうか。

場合によっては、

「事業を引き継ぐ会社」と「資産を管理する会社」を分ける

ことで、承継の姿が非常に分かりやすくなります。



③ M&Aでも大きな意味を持つ

これは親族内承継だけの話ではありません。

M&Aでも非常に重要です。

例えば買手が欲しいのは、

「利益を生み出している本業」

であって、

多額の有価証券や賃貸不動産まで必要とは限りません。

その場合、M&Aの前に事業と資産を整理することで、

「売るもの」と「残すもの」を明確にする

という選択肢が生まれます。

オーナーにとっても、会社のすべてを手放すのではなく、必要な資産を残しながら事業だけを次の経営者へ託す、という設計が可能になる場合があります。



④ 会社分割は「節税策」ではない

ここは非常に重要です。

会社分割という話になると、

「税金が安くなるのですか?」

と聞かれることがあります。

しかし、会社分割の目的を節税だけにしてはいけません。

会社分割には、会社法だけでなく、法人税、消費税、不動産、許認可、金融機関との契約など、さまざまな論点があります。

税務上も、一定の要件を満たすかどうかによって取扱いが大きく変わります。

だからこそ、最初に考えるべきなのは税金ではなく、

「将来、どんな会社にしたいのか」

なのです。



⑤ 会社を「そのまま渡す」だけが事業承継ではない

私は、ここがこれからの事業承継では非常に重要になると思っています。

従来の事業承継は、

「今ある会社の株式を、そのまま後継者へ渡す」

という発想が中心でした。

しかし、会社を30年、40年経営していれば、会社の中にはさまざまな資産や事業が積み上がっています。

それを一度整理し、

次の世代が経営しやすい会社につくり直してから渡す。

これも立派な事業承継なのです。



今週の結論

事業承継で考えるべきなのは、

「誰に株式を渡すか」だけではありません。

何を後継者に渡すのか。

何を先代側に残すのか。

どの事業を伸ばすのか。

どの資産を分けるのか。

そして、将来M&Aという選択肢を取れる会社にしておくのか。

会社分割は、こうした会社の未来を設計するための有力な方法の一つです。

事業承継とは、今の会社をそのまま次世代へ渡すことではありません。

次の世代が成長させやすい会社につくり直して、渡すこと。

私は、そこまで考えることが「事業承継を成長戦略に変える」ということだと思っています。

社長、あなたの会社にある「事業」と「資産」、一度分けて考えてみませんか?



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