第26回 MBOとは?

~「子どもが継がない」からといって、会社を売るしかないのか?~

「息子は会社を継がないと言っています」

「社員の中には任せられそうな人がいる。でも、株を買うお金は持っていない」

事業承継の現場では、こうした相談が少なくありません。

社長の頭の中には、

①子どもに継がせる
②M&Aで会社を売却する


この二つしか選択肢がないことがあります。

しかし、その間にもう一つの選択肢があります。

それが、MBO(Management Buyout:マネジメント・バイアウト)です。



① MBOとは何か?

簡単に言えば、

現在の経営陣が、オーナーから株式を取得し、会社の経営を引き継ぐ方法

です。

例えば、創業社長が70歳。

子どもは会社を継がない。

しかし、長年社長を支えてきた専務や常務がいて、経営能力も社員からの信頼もある。

このような場合、

「その経営陣に会社そのものを引き継いでもらう」

という選択肢が考えられます。

経営を引き継ぐだけではありません。

株式も取得して、経営者からオーナー経営者へ変わっていくのです。



② 最大の問題は「株を買うお金」

ところが、ここで大きな問題が出てきます。

会社の株式価値が5億円だったとしましょう。

いくら優秀な専務でも、個人で5億円を用意することは簡単ではありません。

私は、従業員・経営陣への承継では、

「後継者がいるか」という問題と、「株式を買えるか」という問題を分けて考える必要がある

と思っています。

経営を任せられる人がいる。

しかし、その人に資金がない。

だから承継できない。

ここがMBOの大きな壁です。



③ そこで「会社を買う仕組み」を考える

MBOでは、後継経営者がすべて自己資金で株式を購入するとは限りません。

後継者側に受け皿となる会社を設け、金融機関からの借入や外部資本などを組み合わせて株式取得を検討する
方法があります。

重要なのは、

「後継者にお金がないから無理」と最初から諦めないことです。

株式価値はいくらなのか。

会社にはどれくらいの収益力があるのか。

借入を返済できるキャッシュフローがあるのか。

オーナーは一度に100%手放す必要があるのか。

こうしたことを一つずつ検討していきます。



④ MBOの最大の魅力は「会社が変わりすぎない」こと

M&Aで第三者へ会社を譲渡すると、経営方針や組織、企業文化などが変わる可能性があります。

一方、MBOでは、それまで会社を経営してきた人がオーナーになります。

取引先も知っている。

社員も知っている。

会社の歴史も分かっている。

何より、創業者が大切にしてきた経営理念を理解しています。

つまり、

「経営の連続性を保ちながら、所有を次世代へ移す」

ことができる可能性があります。

これはMBOの大きな魅力です。



⑤ ただし「借金して株を買えばいい」ではない

ここは注意が必要です。

MBOを成立させるために多額の借入をすれば、その後の会社経営に負担がかかる可能性があります。

株式を買うことが目的になってしまい、

設備投資ができない。

人材採用ができない。

新規事業に投資できない。

これでは本末転倒です。

事業承継は、株式を移した瞬間に終わるのではありません。

承継した後、会社が成長できるか。

ここまで考えてスキームをつくる必要があります。



⑥ 「誰に継がせるか」から「誰なら成長させられるか」へ

私は、これからの事業承継では、この視点がますます重要になると思っています。

「長男だから継がせる」

「子どもが継がないから売却する」

この二択ではありません。

社内を見渡してみてください。

10年、20年と会社を支えてきた人はいないでしょうか。

社員から信頼されている人はいないでしょうか。

そして何より、

「この会社をもっと成長させたい」と本気で思っている人はいないでしょうか。

その人が、次のオーナーになる可能性もあるのです。



今週の結論

後継者問題を考えるとき、

「誰が社長になるのか」だけを考えてはいけません。

誰が経営するのか。

誰が株式を持つのか。

株式取得資金をどう準備するのか。

承継後も会社が成長できる財務体質をどう残すのか。

ここまで考えて初めて、本当のMBOになります。

事業承継とは、必ずしも「親から子へ」ではありません。

M&Aでまったく知らない第三者へ譲渡するだけでもありません。

会社を最も理解し、未来を託せる経営陣へ「経営」と「所有」の両方を引き継ぐ。

それも、事業承継の有力な選択肢です。

社長。

「子どもが継がないから後継者はいない」と決めてしまう前に、もう一度、社内を見渡してみませんか?

次のオーナーは、すでにあなたの隣にいるかもしれません。



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